従来、研究用のニホンザルは、「猿害」を理由に地元自治体の許可によって行なわれる有害鳥獣駆除によって捕獲された動物を法的手続きを経て譲渡を受けるか、国内の小規模繁殖群由来の動物を動物取り扱い業者を介して購入するということによって入手されてきました。
しかし、近年、野生由来の動物を研究に使用することを放置しておくと、それを理由に計画的でない捕獲がおこなわれ、その結果、野生群の存続をおびやかすことになるという批判が日本霊長類学会をはじめとするサルの生態研究者の間から高まってきました。そしてそれを受ける形で、1999年6月、当時の環境庁(現在の環境省)は、第8次鳥獣保護事業計画の手直しに際し、サル捕獲の申請の際に提出する「捕獲後の処理方法」に関して、それまで認めていた「学術研究一般への使用」を制限して「野生鳥獣の保護管理に関する学術研究、環境教育などに限る」と改訂することとしました。
記事1
(朝日新聞2000/12/17)
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記事2
(朝日新聞2002/8/3)
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その改訂にむけて環境庁が広くパブリックコメントを求めた際、多くの研究者は実際に研究に使用されているサルは捕獲されているサル全体の一部に過ぎず、研究に使用することが野生群の存続を脅かすことはないと反論しました。このような状況について当時の新聞は、神経科学研究者と霊長類研究者が「対立」ないしは「衝突」していると報じました(記事1参照)。実際には、その後、神経科学研究者と霊長類学者は、「サルネットワーク会議」を結成し、同じテーブルについて、望ましい研究用のサルの供給体制をどのように作っていくかについて議論を開始しました(記事2参照)。
そこで私達は真剣な議論を重ね、
1)野生ザルの直接の研究利用は今後なくしていく。
2)研究用サルの供給ルートをガラス張りにしていく。
という基本合意のもと、これまで長年問題とされてきた野生ザルの保護と研究用動物の確保を両立させるには、研究用サルの繁殖施設を設置するしかないという結論に至りました。
その結論に基づき、日本生理学会、日本神経科学学会、日本霊長類学会は、それぞれに研究用サルの繁殖施設設置の要望書を作成し、2001年5-6月に文部科学省の関連部局、日本学術会議、総合科学技術会議に合同で提出しました。また各学会の代表者が米国の霊長類センターの視察を行って、米国に設置されている大規模な施設がどのように運営されているかの調査報告書を提出しました(米国の霊長類センターへのリンク)。
そしてこの要望を現実のものとするために、平成14年度より始まった文部科学省のナショナルバイオリソースプロジェクトに、研究用ニホンザルの繁殖センター設置プロジェクトを申請することになりました(詳しくは「ナショナルバイオリソースプロジェクトについて」のページをご覧下さい)。
代表申請者の所属する生理学研究所を中核機関として、民間の繁殖施設を用いた繁殖のモデルケースの構築を目指すという私たちの計画は採択され、ここに初めて、研究用ニホンザルの繁殖センター設置構想が国のプロジェクトとして、試験的ではありますが開始されることになりました。
朝日新聞2003/7/23
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この初年度の活動が認められ、平成15年度からは京都大学霊長類研究所がサブ機関として参加し、より大規模な繁殖センター設置にむけての活動が本格的に開始され、現在に至っています。
ニホンザルは生まれてから大人になるまで最低でも4-5年の歳月を必要とします。今から計画をスタートさせても、実際に必要とされる規模でのセンターが本格稼動するには、まだ5-10年の時間を要します。しかし、今始めなくては将来の研究の継続が危ぶまれるのは明らかであり、計画実現のため私たちは粘り強く活動を続けていきたいと考えています。
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